なぜ今あらためて第三部を語るのか
「ジョジョの奇妙な冒険」と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが
空条承太郎とスタープラチナ、そして宿敵DIOとの最終決戦ではないでしょうか。
第三部「スターダストクルセイダース」は、
シリーズの中でも特に知名度と影響力が高いエピソードです。
- 週刊少年ジャンプでの連載は1989年から1992年まで
- 全152話が単行本16巻に収録
- 2014〜2015年にはTVアニメとして全48話で映像化
この第三部で初めて登場した能力バトルシステム「スタンド」は、
その後のバトル漫画・アニメの構造を一気に塗り替えました。
この記事では、世界一のライターかつ映画評論家的視点から、
- 作品概要と物語の魅力
- キャラクターとスタンドの面白さ
- アニメ版ならではの演出
- 荒木飛呂彦の制作裏話
- 映画好き・アニメ好き目線での“鑑賞ポイント”
- 関連・おすすめ作品
まで、スターダストクルセイダースを丸ごと味わい尽くせる形で解説していきます。
作品概要
スターダストクルセイダースとは何か
「スターダストクルセイダース」は、『ジョジョの奇妙な冒険』第三部にあたる物語です。
- 作者:荒木飛呂彦
- 掲載誌:週刊少年ジャンプ
- 連載期間:1989年4月〜1992年4月
- 単行本巻数:全16巻
時代設定は1980年代後半。
前作「戦闘潮流」から約半世紀後の世界で、
第二部の主人公ジョセフ・ジョースターの孫にあたる不良高校生、
空条承太郎が新たな“奇妙な冒険”へと旅立ちます。
あらすじをざっくりまとめると、こんな物語です。
- 日本の高校生・承太郎に、不可思議な力「スタンド」が発現
- その原因は、百年の眠りから復活した吸血鬼DIOの存在
- DIOの影響で、承太郎の母ホリィにもスタンドが発現するが、 その優しすぎる性格が災いして命を蝕まれてしまう
- 承太郎は母を救うため、祖父ジョセフ、 そして仲間たちとともにDIOを倒しにエジプトを目指す
東京から香港、シンガポール、インド、中東、そしてエジプトへ――
世界各地を巡る“ロードムービー形式”で進むのが第三部の大きな特徴です。
物語の魅力
世界を横断するロードムービー型バトル漫画
当時の週刊少年ジャンプといえば、
バトル漫画=「トーナメント形式」が主流でした。
- 敵が順番に出てきて、
- 勝ち上がっていくうちに
- ボスに近づいていく
という定番スタイルです。
しかし荒木飛呂彦は、第三部をあえて“旅もの”にしました。
- 舞台は日本からアジア、中東、エジプトへ
- 航空機、船、列車、徒歩と、交通手段も毎回変化
- 各地で出会うスタンド使いとのバトルが、物語の章立てになる
作者自身、ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』のような
世界を巡る冒険譚をイメージしていたと語っています。
この「ロードムービー型バトル漫画」の構造が、
- 毎話ごとに舞台と敵がガラリと変わる
- 各話がひとつの短編のように楽しめる
- それでいて、DIOの本拠地エジプトへ確実に近づいている緊張感もある
という、非常にリズムの良い作品体験を生み出しています。
アニメ版では、この「旅の実感」がさらに強化され、
- 背景美術で描かれる各国の街並み
- 現地の人々の描写やBGMの雰囲気
- 移動シーンのカット割り
などから、視聴者の体感としても「本当に世界を旅している」ような没入感が生まれています。
スタンドという革命
第三部がバトル漫画を変えた理由
第三部最大の功績は、なんといっても「スタンド」という概念の登場です。
スタンドとは何かを、作中の表現を借りずにざっくり言い換えると、
- その人の精神力が生み出した守護霊のような存在
- それぞれが固有の能力を持ち、姿も性格もバラバラ
- 本体からある程度離れて行動できる“もう一つの身体”
という、非常に自由度の高いバトルシステムです。
第一部・第二部で使われていた「波紋」は、
肉体強化型の武術としても魅力がありましたが、
第三部からは一気に「頭脳戦」「能力バトル」の要素が強まりました。
- 時間を止める
- 精神を支配する
- 影や水、夢、磁力、ギャンブルの勝敗にまで干渉する
など、スタンドの能力はほぼ無限です。
この「ルールはあるが自由度が高い」戦い方は、
後の多くのバトル漫画・アニメにも大きな影響を与えました。
- 能力バトル物の構造
- 敵スタンドの“毎回違うトリック”
- 論理パズルのようなバトル展開
こうした第三部のフォーマットは、その後の『ハンター×ハンター』や『呪術廻戦』などにも通じる、現代バトル物の原型のひとつと言っていいでしょう。
キャラクターとスタンドの魅力
承太郎たちはなぜこんなに愛されるのか
空条承太郎とスタープラチナ
第三部の主人公は、学ランに帽子、無愛想で寡黙な高校生・空条承太郎。
作者は西部劇の俳優クリント・イーストウッドをモデルに、
ポーズや台詞回しをイメージしたと語っています。
- 無駄口をたたかず
- 「やれやれだぜ」とぼやきつつも
- 最後には圧倒的な実力で敵をねじ伏せる
というキャラクター像は、後の“クール系主人公”の先駆けとも言えます。
彼のスタンド「スタープラチナ」は、
- 超高精度の肉弾戦
- ゴムのような伸縮性
- そして終盤で明らかになる“時間”に関する能力
を持つ、まさに「近距離パワー型」の完成形のようなスタンドです。
ジョセフ・ジョースターとハーミットパープル
第二部の主人公ジョセフが、第三部では頼れる祖父として再登場します。
彼のスタンド「ハーミットパープル」は、
ツタ状の能力で映像機器などを通じて情報を引き出す、一種の“占い”スタンド。
- 若いころのハチャメチャさ
- 年を重ねた分の経験値
- それでも変わらないお調子者ぶり
このギャップがたまらないキャラクターです。
花京院典明、ジャン・ピエール・ポルナレフ、モハメド・アヴドゥル、イギー
承太郎とジョセフに加え、第三部の旅を共にするのが
- 法皇の緑を操るクールな転校生・花京院
- 銀の戦車を振るうフランス人剣士・ポルナレフ
- 炎のスタンド魔術師・アヴドゥル
- 砂を操る犬スタンド使い・イギー
という超個性的な面々。
特に犬のスタンド使いイギーは、
作者が「ペット的な存在を入れたかった」ことから生まれたキャラクターで、
アメリカンコミック風のスタンド「ザ・フール」との組み合わせは、
荒木飛呂彦が理想とする“複合的なデザイン”の一例でもあります。
DIOとザ・ワールド
そして、すべての元凶にしてシリーズ屈指の人気悪役DIO。
第一部から続く因縁を背負い、
第三部では「時間を止める」という、
極めてシンプルかつ理不尽な能力を手に入れて登場します。
ザ・ワールドとスタープラチナ。
ほぼ同じ性能を持つ二つのスタンドが、
カイロの街を舞台にぶつかり合うクライマックスは、
いまだに多くのファンから“バトル漫画史に残る名勝負”として挙げられています。
アニメ版スターダストクルセイダース
デイヴィッドプロダクションが描いた48話の旅
第三部は、2014〜2015年にかけてTVアニメ化されました。
- 制作:デイヴィッドプロダクション
- 全48話構成
- 前半24話が「スターダストクルセイダース」
- 後半24話が「エジプト編」として放送
デイヴィッドプロダクションは、
第一部・第二部のアニメ化で独特の色彩設計や擬音演出を確立しており、
第三部でもその路線をさらに進化させました。
アニメ版の見どころを挙げると、
- カラーリングの大胆な変化
- 感情の高ぶりに合わせて背景色やキャラクターの色が反転
- 漫画的な擬音をそのまま画面に出す演出
- スタンドバトルのカメラワークと音響
- 最終決戦にかけてのテンポ感と音楽の盛り上げ
など、“原作の空気”を映像に落とし込む工夫が随所に見られます。
また、第三部のアニメ化にあたっては、
原作でやや駆け足だった部分を補完する形で演出が追加されており、
キャラクター同士の関係性や感情の動きが、より丁寧に描かれているのもポイントです。
制作の裏側
荒木飛呂彦の発想とスタンド誕生の背景
制作の裏側に目を向けると、
スターダストクルセイダースは荒木飛呂彦にとっても“挑戦の場”だったことがわかります。
いくつか興味深いポイントを挙げてみましょう。
ロードムービー形式へのこだわり
作者は当初、シリーズ自体を三部構成で考えており、
最終決戦を「現代日本ではなく世界を巡る旅の果て」に置きたいと考えました。
ただ、当時のジャンプで流行していた
トーナメント形式のバトルや、学園ものにはしたくなかったため、
世界旅行型のストーリーに振り切ったとされています。
スタンドデザインの発想源
スタンドのデザインは、
先住民の仮面や装飾品、民芸品、ドールなど、
“人工物と生物の融合”から着想を得ることが多かったと語られています。
たとえばイギーのスタンド「ザ・フール」は、
- 犬という生物
- 先住民風の仮面
- 車のタイヤ
といった要素を組み合わせたもので、
作者にとっての理想的なスタンドデザインの一例だとされています。
編集者とのエピソード
DIOとの最終決戦連載中、
当時の担当編集者が突然入院してしまい、
荒木先生が非常に不安になりながらクライマックスを描いていた、
というエピソードも残っています。
結果として、
読者の記憶に深く刻まれる名バトルになったのは、
ある意味“追い込み状態”の中で生まれた集中力の賜物かもしれません。
スターダストクルセイダースが与えた影響
第三部は、ファン人気の高いエピソードとしても知られており、
2018年に行われたシリーズ人気投票でも、
第3位という高い支持を集めました。
特に、
- 承太郎 vs DIOの最終決戦
- 世界各地を旅する構成
- スタンドバトルの形式
は、漫画・アニメに限らず、
ゲームや他作品の演出にも影響を与えています。
また、英語版コミックスでは、
第三部から翻訳刊行がスタートしており、
海外のファンにとっての“ジョジョの入口”としても機能しました。
その結果、
- 「オラオララッシュ」
- 「時よ止まれ」
といった要素は、
世界的なポップカルチャーの一部として浸透し、
ミーム化やオマージュの対象として今も愛されています。
映画・アニメ好きに刺さる鑑賞ポイント
スターダストクルセイダースは、
単に「有名な少年漫画の一部」というだけでなく、
映画ファン・アニメファン目線でも楽しめるポイントが満載です。
ロードムービーとして
- 世界各地を旅しながら敵と出会う
- それぞれの土地の文化や風景が背景で描かれる
- 仲間が増えたり、離れたりしながら終着点を目指す
この構造は、まさにロードムービーそのもの。
『マッドマックス 怒りのデスロード』や
『ワイルド・スピード』シリーズなど、
移動そのものがドラマを生む作品が好きな人には特に刺さるはずです。
サスペンスとして
スタンドバトルの多くは、
- 敵がどこにいるか分からない
- 能力の正体が分からない
- ルールを見抜いた瞬間に勝機が生まれる
というサスペンスの構造を持っています。
これはミステリー映画や、
論理ゲーム系アニメ(たとえば『デスノート』など)が好きな人にも
楽しめるポイントです。
ビジュアルとレイアウト
荒木飛呂彦の絵柄は、
ファッション誌のようなポージングと大胆な構図が特徴です。
- 斜めに切り取られたコマ
- デフォルメされた背景
- 線よりも面で魅せるシルエット
こうした要素は、映画で言えば
「カメラのレンズを思い切って傾ける」「シルエットでキャラを見せる」といった
スタイリッシュな映像演出に近いものがあります。
アニメ版ではこれをさらに前に押し出し、
色彩やカット割りで“動くアートワーク”として完成させています。
この作品が好きならおすすめしたい作品
ジョジョの他部
- ファントムブラッド(第一部)
- 戦闘潮流(第二部)
- ダイヤモンドは砕けない(第四部)
- 黄金の風(第五部)
特に第四部は、
第三部で確立されたスタンドバトルを
より日常系の舞台に落とし込んだ“アナザースタイル”としておすすめです。
アニメ・漫画
- ハンター×ハンター 能力制約と頭脳戦という意味で、スタンドバトルとの共通点多数。
- 呪術廻戦 術式や領域展開など、現代能力バトルの文法にジョジョからの影響を感じる部分も。
- からくりサーカス 旅と因縁と家系の物語。家族の血脈と戦いが続いていく構造はジョジョと親和性高めです。
映画
- スタンド・バイ・ミー 少年たちの旅と成長というロードムービーとしての原点。
- マッドマックス 怒りのデスロード 移動しながら戦い続ける“走るロードムービー”。
- オーシャンズシリーズ 個性の強い仲間たちがチームを組む群像劇として、 ジョジョの「旅の仲間」感と通じるものがあります。
まとめ
スターダストクルセイダースは、なぜ今も語り継がれるのか
「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」は、
- スタンドという革命的バトルシステムの登場
- 世界を股にかけたロードムービー的構成
- 強烈なキャラクターと宿命の対決
- そして、その後の作品群に与えた計り知れない影響
によって、今なお多くのファンに愛され続けています。
映画好き、エンタメ好き、アニメ好き。
どの入口からでも楽しめるのが第三部の強さです。
- まだ一度も触れたことがない人は、「ここから入るジョジョ」として
- すでに何度も見たことがある人は、「ロードムービー」「能力バトル」「家族の物語」という観点から あらためて見直してみると、新しい発見が必ずあるはずです。
時は1980年代。
日本からエジプトへ続く、砂とスタンドの旅路。
承太郎たちの「やれやれだぜ」と、
DIOの「時を支配する」野望がぶつかり合う瞬間を、
もう一度じっくり味わってみてください。
スターダストクルセイダースは、
何度読み返しても、観返しても新しい表情を見せてくれる
“終わらない旅”そのものなのです。