ワーキングマン 感想と偏愛考察 ジェイソン・ステイサムが現場で殴ると説得力が倍増する件

ワーキングマン 感想と偏愛考察 ジェイソン・ステイサムが現場で殴ると説得力が倍増する件

ステイサムがスーツを着ていても強いのは知っている。

でも作業着だと、なぜかもっと強そうに見える。

映画「ワーキングマン」は、その感覚を真正面から肯定してくるアクションでした。元特殊部隊員の男が、いまは建築現場の監督として生きている。安全第一。ヘルメット。工具。工程表。そこへ誘拐事件がドン、と落ちてくる。日常が割れる音がする。ここから先は、現場で培った段取り力と、過去に封印していた暴力の精度が同時に回り始める。怖いのは敵ではなく、主人公のスイッチの入り方だったりします。

この映画、派手さはあります。

ただし派手さの方向が「職人芸」寄り。

大爆発で盛り上げるより、距離感と呼吸で締める。殴るときのリズムが妙に落ち着いている。焦りがない。そこが良い。見ている側も変な安心をしてしまう。いや安心している場合ではないのに、と突っ込みたくなる。こういう矛盾が面白いんです。

ワーキングマンはどんな映画か 現場監督が巨大犯罪組織にケンカを売る

主人公はレヴォン・ケイド。演じるのはジェイソン・ステイサム。元英国海兵隊の特殊部隊出身という経歴を背負いながら、いまは建築現場の監督として静かに暮らしています。静かに、と書いたけれど実際は現場が静かであるはずもない。鳴り続ける機械音、飛び交う怒号、動く人間。戦地とは違うのに、どこか似た空気がある。だからこそ、彼の過去がふと顔を出す瞬間が怖い。

事件の火種は上司の娘の失踪。ここからレヴォンは捜索に踏み込み、人身売買を軸とした犯罪のネットワークに触れてしまう。触れたら最後。敵は引かない。主人公も引かない。やり取りは簡単で、だから恐ろしい。善悪の講義は始まらない。誰かを取り戻すために、手段が剥き出しになっていく。

この映画が上手いのは、主人公の動機が綺麗すぎないところです。正義の味方というより、義理と怒りの人。職場の人間関係を大事にするタイプの頑固者。現場で一番厄介なやつ。頼りになるが、怒らせたら終わるやつ。そういうリアリティがある。

監督はデヴィッド・エアー ステイサムと再タッグの意味

監督はデヴィッド・エアー。荒っぽい街の匂い、男同士の沈黙、そして突然の暴力。そういう要素を得意とする監督です。本作でもその癖がよく出ています。余計な説明を削り、視線と間で語る。警察や組織の説明に時間を割かない。観客に理解させるより、巻き込む。これは好みが分かれるけれど、僕は好きだ。

しかも脚本にシルベスター・スタローンが絡んでいる。筋肉と矜持の匂いがするのは、そのせいでもあります。いわゆる「俺はもう終わった男」からの再起。あの古典的な味が、エアーの乾いた演出と混ざって、独特の渋みが出る。甘くならないのが良い。甘さがあるとすれば、それは現場の人間関係の方だ。そこだけは妙に温かい。温かいからこそ守りたくなる。ちょっとずるい。

主演俳優と主要キャスト クセの強い顔が揃っている

ジェイソン・ステイサムは言わずもがな。説明不要の「殴る説得力」。ただ本作の面白さは、彼を囲むキャストにもあります。

マイケル・ペーニャ。良い意味で普通の人の匂いがする俳優です。だからこそ、事件に巻き込まれる側の恐怖が生々しい。家庭や仕事の感触が伝わると、犯罪が一気に現実になる。ファンタジーではなく、明日のニュースのようになる。嫌なリアルさ。

デヴィッド・ハーバーも良い。存在感が重い。彼が出るだけで空気が濃くなる。味方にいても怖いし、敵だともっと怖いタイプ。頼もしさと不穏さが同居している。こういう人が隣にいると、安心していいのか警戒すべきなのか分からない。戦いのテンションが上がる。

ジェイソン・フレミングも抜群。顔に悪役の履歴書が書いてある。静かに笑うだけで嫌な予感がする。こういう俳優がいると、物語が締まる。ステイサムの暴力が「必要な仕事」に見えてしまう。倫理的に危ない。だが映画としては最高。

音楽はジャレッド・マイケル・フライ 音で殴ってくるタイプ

音楽はジャレッド・マイケル・フライ。派手にメロディで泣かせるというより、低音とリズムで胃のあたりを押してくる作曲です。画面が止まって見える瞬間でも、音が先に走る。心拍数が引っ張られる。視線が勝手に前に出る。

ステイサム映画の音楽って、派手に盛り上げすぎると急にB級の香りが出ることがある。そこをギリギリで回避している。いや回避というか、逆に「仕事の音」に寄せている。工具の金属音、靴底の擦れる音、無線のノイズ。その延長線上に劇伴が置かれている感じ。耳が疲れないのに、緊張は残る。不思議な塩梅です。

ワーキングマンの見どころ 現場の段取りがアクションを支配する

この映画のアクション、やっていることは派手です。

でも見え方は地味。

なぜか。主人公が「段取り」で戦うから。相手の人数や導線を読む。逃げ場を潰す。時間を稼ぐ。先に道具を確保する。つまり現場監督の動き。ここが新鮮でした。格闘技の天才というより、作業手順が身体に染み付いた人の動きなんです。

乱暴に言えば、敵を倒すというより「工程を完了させる」。そう見える瞬間がある。殴っているのに、表情が仕事モード。怖い。何が怖いって、怒りが爆発しているのではなく、怒りが冷えて固まっているところ。熱い怒りは消える。冷えた怒りは残る。残るから厄介。

あなたの職場にもいませんか。普段は穏やかで、怒っても声を荒げないのに、いざという時だけ判断が鬼のように速い人。あのタイプの怖さに近い。しかもそれがステイサムの顔で出てくる。説得力が過積載です。

道具の使い方が気持ちいい 工具は裏切らない

工事用具や現場の物が、戦いの中で生きる。これが痛快です。銃だけが強い世界ではない。レンチも強い。バールも強い。ロープも強い。現場は武器庫だと言わんばかり。もちろん現実に真似しようなどと思ってはいけない。だが映画の中なら話は別。使い慣れた道具が、最も信用できる相棒になる。男のロマンが詰まっている。

そしてこの映画、道具の重さをちゃんと撮る。軽く振り回せない。だから一撃が重い。一撃が重いと、観ている側の体も反応する。肩がすくむ。口がすぼむ。地味に効く。

裏側の話 原作は小説 脚本はスタローンとエアーの筋肉配合

本作はチャック・ディクスンの小説「Levon’s Trade」を原作にしています。元々は映像化の形がいろいろ検討されていたそうで、最終的に映画としてまとまった。シリーズ化の可能性が噂されるのも、原作側に積み重ねがあるからでしょう。

脚本にスタローンが関わると、独特の香りが出ます。男の友情、義理、家族、そして「仕事」という言葉の重さ。ワーキングマンというタイトルが持つ硬さも、その文脈に乗っている。現場仕事を軽く見ない。むしろ誇りにする。そこが良い。働く人間の映画としての顔がある。

撮影面の話をすると、現場描写が案外しっかりしています。背景にいる作業員の動き、資材の積み方、現場の雑然としたリアル。美術が頑張っている。もちろん映画なので誇張はある。だが雑さが雑に見えない。ここは嬉しいポイントでした。

こういう人に刺さる 映画好き エンタメ好き アニメ好きへの推薦文

映画好きには、ステイサムの安定感が刺さる。安心して身を預けられるタイプの主演だ。新しい顔ではないが、そこが良い。寿司屋でいつものネタを頼むような快楽がある。

エンタメ好きには、テンポの良さ。説明を削り、行動で見せる作りが刺さる。流し見すると分かりにくい場面もあるが、集中して観ると気持ちがいい。仕事終わりに脳を切り替えたい時に向いている。

アニメ好きには、構造が刺さると思う。主人公が封印していた力を再び使う。大切な人を守る。敵組織が階層構造で出てくる。中ボスを倒すと上が出てくる。レベルデザインがゲーム的でもある。しかも主人公の戦闘スタイルが一貫している。ブレない主人公は強い。アニメ文法としても気持ちいい。

もう一つ質問です。あなたは、強い主人公が淡々と仕事をこなす作品に弱くありませんか。僕は弱い。だからこの映画にニヤッとしてしまう。悔しいが、そういう性格なのだ。

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同じ系統のステイサム作品 仕事人の顔が似合う

  • ビーキーパー 怒りの火力が高い ただし理屈は置いていく
  • トランスポーター ルールを守る男がルールを破る快感
  • メカニック 静かなプロの怖さが見たい時に効く

現場感があるアクション 力より段取りで勝つ味

  • ジョン・ウィック 構造美と動線の気持ちよさ
  • イコライザー 普段は穏やか だがスイッチが入ると終わる
  • 96時間 家族のために理性が外れる瞬間の怖さ

人身売買や闇組織を扱う作品 後味は重いが引力がある

  • ボーダーライン 正義が歪む現場の空気
  • ザ・タウン 犯罪と生活が同居する街の匂い
  • ノー・カントリー 老いと暴力と運の残酷さ

個人的こだわりポイント ステイサムの強さは手数ではなく間合い

ステイサムの魅力は、派手なアクロバットではない。

間合いだ。

近づきすぎない。離れすぎない。相手が動いた瞬間に、もう終わっている。これが気持ちいい。ワーキングマンでは、その間合いの使い方が丁寧です。若いアクションより、渋い。速さより、確実さ。そこが大人向けの快楽になっている。

そして顔。顔が仕事をしている。無表情なのに語っている。嫌だねえ、格好いい。こういう偏見で映画を褒めるのはどうかと思うが、僕はこの偏見を捨てる気がない。ステイサムは「働く男」が似合う。これで十分だ。

観る前の注意点 気持ちよさとしんどさが同居する

痛快さはある。あるのだが、扱っている題材が軽くない。人身売買の匂いが出る場面は、気分が沈む人もいるでしょう。そこを軽く流さない作りなので、なおさら。

ただ、その重さがあるから主人公の怒りが成立する。軽い敵なら軽い殴りで終わってしまう。観客も軽く見てしまう。映画はそこを許さない。気持ちよさだけで帰してくれない。帰り道に、少しだけ考えが残る。僕はこういう残り方が好きです。

現場の話に戻すと、仕事ってしんどいですよね。しんどいのに、なぜか誇りがある。ワーキングマンは、その矛盾をアクションで包んで見せてくる。やっぱりずるい映画だと思います。

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