はじめに:いま“配信中”のビジョンズ、その正しい呼び名
本稿で扱う「スター・ウォーズ:ビジョンズ」最新シーズンは、公式には**Volume 3(ボリューム3)**と呼ばれます(便宜上“シーズン3”と記します)。2025年10月29日からDisney+で独占配信が始まり、現在も視聴可能。StarWars.comとディズニープラス公式の案内で配信開始日と「いま観られる」事実が確認できます。
ポイント:Vol.3は全9本の短編。制作はすべて日本のアニメスタジオ。Vol.1で話題をさらった名作の“続き”も複数収録され、シリーズの原点(日本アニメの多様性)に回帰しています。
作品データと配信情報
- タイトル:Star Wars: Visions Volume 3(スター・ウォーズ:ビジョンズ Vol.3)
- 形態:短編アニメのアンソロジー(全9話・各話独立)
- 配信:Disney+ 独占(2025年10月29日より)
- 特徴:日本の9スタジオが9本を制作。Vol.1の人気作「The Duel」「The Village Bride」「The Ninth Jedi」の正統続編も含む構成。
視聴ページや国別の案内はディズニープラス公式でも確認可。作品の“2021–2025”表記がシリーズの継続性を示します。
参加スタジオと主要スタッフ
Vol.3に参加したのは、david production / Kamikaze Douga + ANIMA / Kinema citrus Co. / Polygon Pictures / Production I.G / Project Studio Q / TRIGGER / WIT Studio の9組。エグゼクティブ・プロデューサーはJames Waugh / Josh Rimes / Jacqui Lopez、共同EPにJustin Leach、プロデューサーにFlannery Huntley / Kanako Shirasaki。シリーズの骨格を熟知した面々が、日本発の映像言語で銀河神話を再構築します。
9エピソード速読ガイド
各話の正式タイトル/スタジオ/監督/ログライン/注目キャストを、視聴前の“地図”として整理します。詳細はStarWars.comのキャスト&トレーラー発表記事が一次情報です。
- The Duel: Payback(Kamikaze Douga + ANIMA/監督:水野貴信) Vol.1「The Duel」の続編。浪人ローニンが、宿敵“グランド・マスター”と対峙。日本刀×ライトセーバーの所作がさらに研ぎ澄まされ、和様の記号とフォース神話が濃密に結合します。英語版にはBrian Tee / Will Sharpeら。日本語版には寺杣昌紀 / 浪川大輔ほか。
- The Song of Four Wings(四枚羽の詩)(Project Studio Q/監督:小林浩康) 雪原の惑星を舞台に、反乱軍の若きプリンセスと子どもを守る逃避行。AT-AT級の質量感、雪原バトルの冷気、Xウイングの歌うような機械美が“クボリズム”で弾ける一本。英語版にはStephanie Hsu、日本語版に石見舞菜香ほか。
- The Ninth Jedi: Child of Hope(Production I.G/監督:塩谷直義) 名篇「The Ninth Jedi」の正式続編。ジェダイ・ハンターに追われ宇宙に投げ出されたカーラが、謎のドロイドと遭遇。ライトセーバーの“色が心を映す”設定が、成長と選択の寓話としてさらに深まります。英語版にFreddie Highmore / Simu Liuら。
- The Bounty Hunters(WIT STUDIO/監督:山元隼一) “訳ありの賞金稼ぎ”が依頼を受けた先で、己の倫理と報酬の間で揺れる。硬派なスペース・ウエスタンの美学に、WITの運動エフェクトが炸裂。スタジオ公式の作品ページでも概要が公開されています。
- Yuko’s Treasure(ユコの宝物)(Kinema citrus Co./監督:橘正紀) 箱入りの孤児ユコと、路上の相棒少年。海賊に攫われた介護ドロイドを取り返す旅が“宝の意味”を照らす。英語版にHarvey Guillén / Steve Buscemiら。
- The Lost Ones(彷徨う者たち)(Kinema citrus Co./監督:垪和等) 難民支援を手伝った“F”が、帝国の拿捕で過去と向き合う。Vol.1「The Village Bride」の精神的継承編で、祈りとレジスタンスの距離感が滋味深い。
- The Smuggler(TRIGGER/監督:大塚雅彦) “手っ取り早い稼ぎ”を狙う密輸業者が、帝国に追われる逃亡者を救出するミッションへ。政治サスペンス的な陰影とトリガー節の疾走が同居。英語版にEmma Myers / Judith Lightら。
- The Bird of Paradise(極楽鳥の花)(Polygon Pictures/監督:吉平“Tady”直弘) 戦いで視力を失った若いジェダイ見習いが、闇への誘惑と霊的修行に挑む。鳥の意匠とフォースの神秘が重層化した“内的旅路”。英語版にSonoya Mizuno / George Takei。
- BLACK(david production/監督:大平晋也) 帝国兵の心象を、光と闇、生と死がせめぎ合う超・感覚体験として映像化。アニメーションの自由度で“戦場の内面”を切り裂く実験的快作。8月の特別プレビューやキーアート公開で注目を集めました。
各話タイトル・監督・キャストの一次情報はStarWars.com(公式)に網羅。日本メディアの各種プレビューでも同リスト・見どころが整理されています。
どれから観る?“推し順”を作ってくれる公式ビューワーズガイド
StarWars.comのViewing Guideは、あなたの好きな本編やスピンオフに合わせて、Vol.3の各話をレコメンドしてくれる“導線記事”。たとえば「The Mandalorian」が好きならThe Bounty Huntersから、「帝国の逆襲」愛が強いならThe Song of Four Wingsから、という具合。観る順番でテーマの響き方が変わるのが本アンソロジーの醍醐味です。
トレーラーが示した“ビジュアルの約束”
9本の新作を束ねるトレーラーは、Vol.1の名作群の“続き”を明確に宣言。とりわけThe Duel: Paybackに登場する“異形の多刃ライトセーバー”は、ファンの熱量を一気に押し上げました。デザイン的にはグリーヴァス将軍の発想をさらに拡張したような“狂気の華”。ニュースメディアもこのカットを強調しており、視覚的イノベーションの予告編として強力です。
評論:日本アニメの“多声”が、銀河神話の奥行きを増幅する
Vol.3は、単に「日本回帰」ではありません。機械設計の快楽(Project Studio Q)/身体アクションの気持ちよさ(TRIGGER / WIT)/霊性と寓話性の磨き(Polygon / I.G)/映像詩の極北(david production)といった異なる美学が同居する設計。スター・ウォーズの“普遍神話”を、9つの異相でプリズム分解したとき、見る者は自分の倫理観・トラウマ・憧れの角度から再投影できる。これがVisionsの真価で、Vol.3はその総決算のように機能しています。
- 「The Duel: Payback」では、個の矜持が試される。ローニンの“孤”は、帝国やジェダイといった枠組みを超え、自分の選んだ剣で立つことの肯定へ。
- 「The Ninth Jedi: Child of Hope」では、ライトセーバーの色=心が、作中世界と視聴者の内面をつなぐ“鏡”となる。
- 「BLACK」は、“帝国兵”を匿名の悪として処理しない覚悟を示し、戦う者の内奥へ潜る。視聴体験は不穏で美しい“瞑想”。
この多声合唱こそが、日本のアニメ文化とスター・ウォーズ神話の最幸の交差点です。
裏側の情報:Vol.3がたどり着いた場所と、次に来るもの
- 日本アニメに再集結:Vol.3は、参加スタジオの全てが日本。Vol.1の源流に立ち返り、9つの日本勢で“銀河を再構成”する方針が公式に示されました。
- キャストの国際性:Simu Liu / Steve Buscemi / George Takei / Stephanie Hsu / Anna Sawai / Jodie Turner-Smith / Freddie Highmoreら、英語版ボイスの顔ぶれが強力。多言語・多文化の“窓”としても機能します。
- スピンオフ始動:Vol.3ののち、“Visions Presents – The Ninth Jedi”というスピンオフ・シリーズが2026年配信へ。短編から選抜して“長尺で掘る”新レーベルの第一弾です。
- Celebration Japan 2025:日本開催の公式イベントでVol.3の初披露と詳細が明かされ、10月29日配信のロードマップも公式発表。
体験設計:どの短編も“入口にも、出口にも”なる
Visionsは「順番通りに見なければ理解できない」性質の作品ではありません。各話が入口であり、出口でもある。だから――
- スター・ウォーズ初見の人には、「The Bounty Hunters」や「The Smuggler」のジャンル感で掴むアプローチ。
- 銀河の“霊性”が好きな人には、「The Bird of Paradise」「Child of Hope」。
- アニメ表現の極北を浴びたい人には、「BLACK」。
- 和の連続性に痺れた人には、「The Duel: Payback」「四枚羽の詩」。 公式Viewing Guideの“好みに合わせた導線”は、本当に親切。迷ったらそこから始めてください。
技術と美学:メカ、カメラ、色、そして“間”
- メカの快楽:Project Studio QはXウイングやAT-ATを日本機構の感性で再設計。ジョー・ジョンストン的設計思想の再読がうれしい。
- 色と内面:Production I.Gのセーバー色理論は心情と倫理のビジュアライズ。Vol.3で一段と筋肉質に。
- 編集の“間”:TRIGGERやWITのアクションは“加速と溜め”の呼吸で見せ、david productionの「BLACK」は敢えて反射的理解を拒む画で、内面処理の時間を観客に委ねる。
実務的・視聴ガイド
- 視聴環境:暗い部屋+良質のヘッドホン推奨。SEと音楽が“視界”を作ります。
- 順番:公式Viewing Guideの“好きな本編から誘導”を活用。
- 連続鑑賞のコツ:9本を一気に観るなら、2〜3本→休憩で感覚をリセット。
- 用語と世界観:本編と地続きの固有名詞は多いが、予習不要。流れで十分掴めます。
- 推し記録:各話の“好きだったショット”“刺さった台詞”“気になった色”をメモ。後から語りやすい。
こんな人に刺さる
- 映画好き:アートディレクションとモンタージュの“個性比較”が楽しい。
- エンタメ好き:賞金稼ぎ譚、密輸劇、雪原戦などジャンル横断の充実。
- アニメ好き:作画・レイアウト・美術の“語り”が多彩。Vol.1よりもさらに差異が栄養になっている。
関連作の“観る順”アシスト
- Vol.1の「The Duel」「The Village Bride」「The Ninth Jedi」――Vol.3の続編群の“源流”。
- 『アンドール』――政治スリラーの血が通う「The Smuggler」へ自然接続。
- 『マンダロリアン』――賞金稼ぎの倫理を考えるなら「The Bounty Hunters」へ。
- 『帝国の逆襲』――雪原×機甲×反乱のロマンは「四枚羽の詩」へ。
- 『フォールン・オーダー』※ゲーム――逃亡と成長のドラマは「Child of Hope」へ。
まとめ:ビジョンズは“発見の手触り”を取り戻す装置だ
「スター・ウォーズ」は巨大で、時に“知っている物語”に見えることがある。Vol.3は、その思い込みをたちまち破壊する。9つの声が9つの角度で銀河を照らし、あなたの中の“スター・ウォーズ”を更新してしまう。
いま、配信は始まったばかり。まずは一本。そこから、あなたの銀河を歩き直そう。