推しの子 第3期 視聴前から胃が痛いのに見てしまう 人間の欲望が一番うるさいステージへ

第3期が始まった。2026年1月14日から。仕事終わりに見るには刺激が強いのに、気付くと再生ボタンを押している。そういうアニメだ。TVアニメ「推しの子」は、芸能界を舞台にした物語であり、同時に視聴者の感情を根こそぎ揺らす装置でもある。

第1期は衝撃で殴り、第2期は舞台の熱量で焦がし、第3期は静かに人間を追い詰めてくる。派手な事件だけじゃない。日常の顔をした圧がある。人気、数字、評判、悪意、善意、そして自分でも説明できない嫉妬。全部が同じ部屋にいる。

今期の空気を一言で言うなら、「入れ込み」。第25話のサブタイトルにもなるこの言葉が、まあ怖い。何かに入れ込み始めた人間は強い。だが同時に脆い。踏み外したときの落下速度が速いからだ。

放送と制作の基本情報 第3期はどこから走り出したのか

第3期は2026年1月14日より放送開始。制作は動画工房。監督は平牧大輔、シリーズ構成は田中仁、キャラクターデザインは平山寛菜、音楽は伊賀拓郎。ここまで同じスタッフがそろうと、作品の体温がぶれない。安心して胃を痛められる。変な言い方だが本当です。

キャストも強い。アクアは大塚剛央、ルビーは伊駒ゆりえ、有馬かなは潘めぐみ、黒川あかねは石見舞菜香、MEMちょは大久保瑠美、そしてアイは高橋李依。アイの名前がキャスト欄にあるだけで、胸がざわつく人もいるはず。いるだろう。

そして音。第3期のオープニングは「TEST ME」ちゃんみな。エンディングは「セレナーデ」なとり。攻める曲と、刺してくる曲。組み合わせが悪い意味で上手い。視聴者の心を休ませる気がない。

第3期の第一印象 まぶしいのに息が詰まる

第3期は、勢いだけで突っ走るタイプではない。むしろ逆だ。成功しているように見える瞬間ほど、痛みが混ざってくる。B小町はブレイク寸前。あかねは実力派女優として表舞台へ。アクアもマルチタレントの道を進み始める。順風満帆に見える。

なのに、かなが明るさを失っている。第25話のあらすじにそれが明記される。ここが「推しの子」だと思う。勝っている局面ほど、心が削れていく。芸能の世界は、拍手と同じ手で殴ってくる。拍手の音が大きいほど、殴打音も混ざる。

ねえ、ここで一つ聞きたい。あなたは、周りが成功しているときに自分だけ置いていかれる感覚、ちゃんと味わったことがありますか。あれ、体が冷える。笑っている顔だけが先に固まる。かなの沈み方は、その冷えに近い。

第25話「入れ込み」 これが第3期の温度計だ

第25話の話をする。ネタバレを避けるために細部は濁すが、雰囲気だけは言っておきたい。B小町が上り調子で、周囲も動き始めている。動いているのに、心だけが置いていかれる人がいる。そこに視点が向く。

脚本は田中仁、絵コンテと演出とカラースクリプトは平牧大輔。制作側が「第3期の入口はここだ」と言い切っているように感じた。色も演出も、派手に暴れない。じわじわ。視聴者の胸に湿った布をかぶせてくる。

推しの子は、事件が起きたから怖いのではない。人間の感情が、事件を起こす寸前の形になるから怖い。今期はその「寸前」が長い。長いから、刺さる。

有馬かな かわいさの奥にある危うさが見えてきた

かなは、視聴者が油断しやすいキャラだ。明るい。口が悪い。テンポがいい。いるだけで画面が締まる。なのに、明るさを失う。ここがしんどい。

芸能界モノで「才能があるのに苦しい」はよくある。だが推しの子は、苦しみの質が生々しい。努力が足りないからでも、人気がないからでもなく、周囲の期待と役割が皮膚に貼り付いて剥がれない感じ。自分が自分のファンになれない状態。これが一番つらい。

しかも、かなは自分の弱さを言語化できるタイプでもある。言語化できると何が起きるか。自分を追い込む言葉も増える。頭が良い人ほど、自分を殴る文体がうまい。かなはそのタイプに見える。

アクアという男 進んでいるのに暗くなる

アクアは順調にマルチタレント路線へ。表面だけ見れば勝ち組だ。だが、この男の怖さは「勝っても明るくならない」ところにある。勝てば救われると思ってしまう視聴者の浅い願望を、簡単に裏切ってくる。

大塚剛央の声が良い。淡々としているのに、熱が消えていない。燃えているのではなく、燻っている。火事の前の部屋みたいな声だ。こういう声の使い方をされると、視聴者は逃げられない。

そしてアクアは、他人の感情の地雷を踏むのが上手い。わざとではない瞬間もある。わざとではないのが一番怖い。優しさと冷たさが同じ場所にある人間は、周囲を混乱させる。

ルビーの明るさは武器 ただし武器は持ち主も傷つける

ルビーは光だ。伊駒ゆりえの声が、明るい瞬間の説得力を担保している。だが、光が強いほど影が濃くなる。第3期のルビーは、ただの元気担当では終わらない。

推しの子は、誰か一人がヒーローになって終わる作品ではない。全員が自分の物語を持っている。だから、ルビーの行動にも必ず代償がある。代償があると分かっているのに、見たくなる。厄介な中毒性だ。

黒川あかね 彼女がいると「物語の重心」が変わる

あかねは、物語の重心を動かす役割を持っている。石見舞菜香の演技が静かに鋭い。優しい声のまま、空気を切る。第3期でもその刃は健在だろう。

推しの子の面白さは、感情の読み合いが戦闘になっているところ。あかねはその戦闘のプロ。感情の機微を読み過ぎる人間は、幸せになりにくい。見ている側は面白い。本人は地獄。ひどい構造だが、そこがリアルでもある。

MEMちょ 画面の酸素を作る人

この作品は息が詰まる。息が詰まる作品に必要なのは、酸素だ。MEMちょは酸素役として優秀。大久保瑠美のテンポが、場面の救急箱になっている。

ただ、酸素があるから燃えるとも言える。楽しい瞬間があるから、落差が効く。推しの子は落差の作品だ。落差を作るキャラは、時に残酷な役回りを背負う。笑わせる人ほど、泣かせる装置になる。

音楽の話 OPちゃんみな EDなとり 休ませないセットリスト

第3期のオープニング「TEST ME」は、タイトルからして挑発的だ。試してみろ。こちらを試す気か。ちゃんみなの曲は、感情をきれいに整えない。むしろ崩す。そのまま走らせる。推しの子第3期の空気に合い過ぎている。

エンディング「セレナーデ」なとり。セレナーデと名付けて、優しく抱きしめるのかと思うじゃないですか。違う。多分、抱きしめながら刺す。なとりはそういう声を持っている。視聴者が疲れたところに、静かに針を置く役。

加えて、キャラクターソングCDやサウンドトラックVol.3の情報も公式に出ている。B小町が歌う曲が並ぶのはうれしいのに、歌詞の意味を考え始めると急に胃が重い。推しの子とはそういう作品だ。

裏側の話 制作陣がそろっている強さ

スタッフが継続しているのは大きい。監督が変わると、画面の倫理が変わる。シリーズ構成が変わると、会話の呼吸が変わる。推しの子は会話の呼吸が命なので、ここが崩れないのは助かる。

平牧大輔の演出は、色と間で殴ってくるタイプ。第25話のクレジットにも「カラースクリプト」が入っている。色設計を演出側で握っているのが分かる。芸能界のきらめきは、色が強いほど嘘くさい。だが、その嘘が現実を支配する。推しの子はその矛盾を描く。色の設計が重要になる。

音楽が伊賀拓郎で継続なのも効く。推しの子の劇伴は、泣かせるというより、感情の輪郭を尖らせる方向に働く。第3期はその尖りが似合う。優しくまとめると、この作品は死ぬ。

映画好きに刺さるポイント 推しの子は映像業界モノでもある

推しの子はアニメだが、映像業界を語っている。だから映画好きにも刺さる。制作現場の熱、評価の残酷さ、数字の暴力、役者の孤独。これらは映画でも同じだ。媒体が違うだけ。

しかも推しの子は、業界を礼賛しない。批判だけもしない。甘い夢と苦い現実を同じ皿に盛る。視聴者はおいしい部分だけ食べたいのに、苦い部分も一緒に口に入ってくる。むせる。だが、やめられない。

忙しい社会人向け 見るならこの姿勢が楽

時間がない人ほど、推しの子は危険だ。再生を止めにくい。だから僕のおすすめは、1話だけ見るつもりで、最初から「今日はここまで」と決めておくこと。決めても守れないかもしれないけど。

そしてSNSを見過ぎない。推しの子は情報量が多い作品だ。感想の洪水を浴びると、自分の感情が薄くなる。自分の感情が薄くなると、作品の刺さりが弱くなる。もったいない。

もう一つ聞く。あなたは推しの子を、誰かと語りたい派ですか。それとも一人で抱えたい派ですか。僕は前者に見せかけた後者だ。語りたいのに、語ると壊れそうな気持ちが残る。そういう夜が増えるのが第3期。

推しの子 第3期 ここからの見どころを雑に並べる

B小町の上昇と代償

上がるときほど失うものがある。芸能界の古典だが、推しの子は古典をちゃんと痛くする。

かなの感情の行方

明るい人が暗くなる瞬間は、視聴者の心にも影を落とす。そこを避けずに描くのが推しの子。

アクアの選択

選択が正しいかどうかより、選択の仕方が怖い。静かに決める人間の怖さ。

あかねの観察眼

見えてしまう人は幸せになりにくい。だが物語は動く。だから目が離せない。

音の刺し方

OPとEDのセットで気持ちを整えさせない。毎週、小さく揺さぶられる。

この作品が好きなら ついでに刺さる作品たち

最後はおすすめ。アニメも映画も混ぜる。推しの子が好きなら、同じ部位がうずくはず。

アニメのおすすめ

  • SHIROBAKO 制作現場の熱と地獄が好きなら
  • 映像研には手を出すな クリエイターの妄想が現実を殴る快感
  • スキップとローファー 日常の光と痛みの配合がうまい
  • 昭和元禄落語心中 芸の世界の執念と孤独が見たい夜に

映画のおすすめ

  • ブラック スワン 表現のために自分が壊れていく話が刺さるなら
  • ラ ラ ランド 夢の眩しさと現実の刃を同じ画面で味わいたい人へ
  • ナイトクローラー メディアと欲望の醜さを笑いながら見たいとき
  • セッション 才能と暴力と努力の関係を考えたくなる人向け

推しの子第3期は、明るい顔をして暗い話をする。暗い顔をして明るい未来を見せない。そういう意地の悪さが魅力になっている。好き嫌いは分かれるだろう。だが一度ハマると、抜けにくい。これは偏見だが、推しの子を好きな人は、多分、自分の感情を信じている人だと思う。信じているから傷つく。傷つくから面白い。面白いからまた見る。最悪の永久機関。

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