イントロダクション:F1の世界に挑む伝説のレーサー
2025年6月27日に公開された『F1®/エフワン』(原題:F1 the Movie)は、『トップガン マーヴェリック』製作チームが再びタッグを組み、“究極のスピード”をスクリーンに描き出す野心作です。主演を務めるブラッド・ピット演じるソニー・ヘイズは、かつてF1界を席巻した伝説のドライバー。30年の時を経て再びレースに戻る彼の物語は、単なるスポーツドラマを超え、人間の葛藤、再生、そして絆を力強く描き出します。
あらすじ:栄光と挫折、その先にある再生
ソニー・ヘイズは1993年スペイングランプリでの大事故によりキャリアを絶たれ、一度はF1から姿を消しました。以降は浪費とギャンブルに溺れ、人生の勝利を失いかけていた彼。しかし、伝説の復活を願う旧友でありAPXGPチームのオーナー、ルーベン・セルバンテス(ハビエル・バルデム)の呼びかけで、ソニーは残り9戦で1勝を目指す挑戦に身を投じます。チームの未来を背負い、若きエース候補ジョシュア・ピアース(ダムソン・イドリス)と共闘する中で、彼らは互いに叱咤激励しながら、本来のドライビングへの情熱を取り戻していきます。
ブラッド・ピット×ジョセフ・コシンスキー監督:再生と革新を映すコンビネーション
ジョセフ・コシンスキー監督とは『トップガン マーヴェリック』以来の再タッグ。ソニーという人物像を構築するにあたり、コシンスキー監督は“時代に抗う男の普遍的な魂”を軸に据えました。ブラッド・ピットは、成熟と衰えの危うさを併せ持つ人物を自然体かつエネルギッシュに演じ、スクリーンに圧倒的な存在感を刻みます。彼の繊細な目線やわずかな表情の変化が、キャラクターの内面を深く掘り下げ、観客に強い共感を呼び起こします。
圧巻のレースシーン:リアリズムを追求した撮影技法
本作のハイライトは、何といってもF1マシンの疾走感をありありと体感させるレースシーンです。実際のサーキットを貸し切っての撮影だけでなく、最新のIMAXカメラやドローン、高速カメラを組み合わせ、ドライバー視点・コックピット視点・グランドサイド視点を織り交ぜたダイナミックな編集を実現。エンジン音やタイヤのスキール音なども徹底的に収録・重ね合わせ、まるでヘルメットを被っているかのような臨場感を追求しました。
キャラクターとドラマ:勝負を超えた“人間ドラマ”の深み
- ソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット):かつての栄光を背負いつつも挫折を経てなお走り続ける男。復帰への葛藤と、己のアイデンティティを問い直す姿が印象的。
- ジョシュア・ピアース(ダムソン・イドリス):若き将来有望なレーサー。ソニーとの交流を通じて“結果よりもプロセス”の大切さに目覚め、成長していく。
- ルーベン・セルバンテス(ハビエル・バルデム):旧友としてチーム再建を託すオーナー。経営者としての苦悩と友情の板挟みになる姿がリアリティを添える。
- ケイト・マッケンナ(技術ディレクター):冷静沈着なエンジニアとしてマシンを支える一方、男性中心のF1界での孤軍奮闘を見せる。彼女の存在がチームに欠かせない“精神的支柱”となる。
レーサー同士の友情や師弟関係、チームスタッフとの信頼と確執が重層的に描かれ、勝負の行方だけでなく“人間の絆”がドラマの核として観客の心を揺さぶります。
日本語吹き替え版:声優陣が紡ぐ新たな命
本作の日本語吹き替えは、実力派声優による豪華キャスティングが話題に。
- ソニー・ヘイズ役:堀内賢雄
ブラッド・ピットの持つクールな中に垣間見える情熱を、深みのある低音ボイスで表現。言葉にこもる重みが、復活への葛藤をよりドラマティックに演出します。 - ジョシュア・ピアース役:森本慎太郎(SixTONES)
若々しいエネルギー溢れる声質と、熱量ある演技が原語版のダムソン・イドリスの熱狂を見事に再現。ソニーとの化学反応が吹き替え版でも引き立ちます。 - ルーベン・セルバンテス役:大塚明夫
経営者としての冷静さと、旧友への愛情が交錯する絶妙なトーンを演じ分け。重厚な声がスクリーンでの存在感を遺憾なく発揮します。 - ケイト・マッケンナ役:佐古真弓
技術者らしい論理的な語り口に、時折見せる情熱的な言葉がアクセント。チームを影で支える強さと優しさを感じさせます。
吹き替え版では、原語のニュアンスを尊重しつつ、日本語としての自然な会話感を追求。音のバランス調整も巧みで、レースの轟音と声優のセリフがぶつかり合わず、スムーズに物語へ没入できます。
サウンドトラック:ハンス・ジマー率いる“音のF1”
音楽を手掛けたのは、映画音楽界の巨匠ハンス・ジマー。シンフォニックなオーケストレーションに、エンジン音や観客の歓声、風切り音などを巧みにミックスし、“視覚”だけでなく“聴覚”までもがF1トラック上に引き込まれるようなサウンドデザインを実現しています。
- メインテーマ「Pole Position」:雄大なストリングスとブラスが疾走感を演出。イントロのアコースティックギターがソニーの孤独を、そこから高揚へ至る展開が復活のドラマを象徴します。
- 「Start Your Engines」:エンジン始動のSEをリズムに取り込み、テンポ良く畳みかけるアクション曲。レース開始シーンでの高揚感を最大化。
- 「Pit Stop」:緊迫のピットインシーンを支えるミニマルなパーカッションとエレクトロニックなアンビエンスが融合。秒を削る緊張感が聴く者の鼓動を加速させます。
- 「Rebirth」:ソニーとジョシュアが心を通わせるシーンで流れるバラード調の楽曲。温かく叙情的なメロディが、ドラマのエモーショナルなクライマックスを彩ります。
また、劇中には世界的アーティストによる書き下ろし楽曲も複数登場し、レース前夜の儀式的シーンやエンドクレジットでの余韻をドラマティックに締めくくります。
世界観を深める小ネタ解説
- マシンのモデル:劇中に登場する「APX-01」は架空モデルながら、実在するF1カーを参考に空力やシャシー、リアウィングのディテールまで再現。メカニックたちのこだわりが見所の一つです。
- 撮影協力:モナコ、スパ・フランコルシャン、鈴鹿サーキットなど、世界有数のサーキットを舞台にロケを敢行。各地の風土と観客の熱気が映像にリアルな厚みを加えています。
- 衣装デザイン:レーシングスーツは実際のFIA規格を基に制作。ヘルメットのデザインはソニーの過去と未来を象徴するカラーパターンが施され、ファンアイテムとしても注目を集めそうです。
まとめ:F1映画の新たな金字塔
『F1®/エフワン』は、ブラッド・ピットの圧倒的な演技力、ジョセフ・コシンスキー監督のビジュアル演出、ハンス・ジマーの音楽、そして豪華声優陣による吹き替えが三位一体となった、まさに映画ならではの“総合エンターテインメント”です。スピードとサスペンス、友情と恩讐、勝利の歓喜と挫折の痛み──あらゆる要素が高次元で融合し、多層的な感動を呼び起こします。
F1ファンはもちろん、ヒューマンドラマや音楽、映像美を愛するすべての映画ファンにとって、“120点”と呼ぶにふさわしい傑作。ぜひ大迫力の劇場で、その全てを体感してください。