コート・スティーリング 感想と偏愛考察 猫を預かったら人生が詰む なのに笑ってしまう 90年代NYクライムの快感

コート・スティーリング 感想と偏愛考察 猫を預かったら人生が詰む なのに笑ってしまう 90年代NYクライムの快感

タイトルからしてズルい。

コート・スティーリング。聞き慣れない人もいるでしょう。原題はCaught Stealing。野球の盗塁失敗のニュアンスを背負った言葉で、運の悪さと空回りが最初から予告されている感じがします。 [oai_citation:0‡Oyama cinema Harvest-小山シネマハーヴェスト](https://www.ginsee.jp/harvest/movie-guide/?b=0&c=1181&utm_source=chatgpt.com)

そして内容も、そのまま。

1998年のニューヨーク。元野球有望株の若者ハンクが、今はバーテンダーとして静かに暮らしている。恋人もいる。平和。そこへ隣人がネコの世話を頼んでくる。ちょっと親切にしただけ。たったそれだけで、裏社会の大金絡みの騒動に巻き込まれ、マフィアが入れ替わり立ち替わり殴り込んでくる地獄が開幕する。 [oai_citation:1‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

この筋だけで、もう勝ちです。

しかも監督はダーレン・アロノフスキー。あのブラック・スワンやザ・ホエールの人。理屈でなく体感で殴ってくる映像の鬼才が、90年代NYのクライムアクションを撮る。胃がキュッとなる予感しかしない。 [oai_citation:2‡映画.com](https://eiga.com/movie/104538/?utm_source=chatgpt.com)

なのに本作、妙にポップで、妙に笑えて、妙に痛い。

感情の置き場が分からないのに、ページをめくる手が止まらない小説みたいな映画です。

コート・スティーリングはどんな映画か あらすじをざっくり

舞台は1998年、ニューヨーク。主人公ハンク・トンプソンは、かつてメジャーリーグのドラフト候補とまで言われた元野球選手。だが運命のいたずらで夢が潰れ、現在はバーテンダーとして働く日々。恋人イヴォンヌとの暮らしは慎ましくも穏やか。 [oai_citation:3‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

そこに現れるのが、変わり者の隣人ラス。

彼は突然ネコの世話を頼む。ハンクは親切心で引き受ける。ここが地雷。直後からマフィアが次々と押しかけ、ハンクは理由も分からないまま追われ、殴られ、脅され、逃げ回る羽目になる。 [oai_citation:4‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

助けを求めて警察に走っても状況は好転しない。逃げるほど泥沼。やがて悲劇が起き、ハンクの中の何かが切れる。そしてリベンジへ。 [oai_citation:5‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

この筋書き、B級の匂いがするでしょう。

でも撮っているのがアロノフスキー。ここが怖い。B級のフリをして、神経の襟首をつかんでくる。

監督はダーレン・アロノフスキー この人が撮ると何が起きるのか

ダーレン・アロノフスキー監督の特徴って、体に来ることです。

頭で理解する前に、胸がザワつく。映像も音も、観客の呼吸を支配しに来るタイプ。ブラック・スワンで精神を削り、ザ・ホエールで情緒を押しつぶす。そういう作家が、今回はクライムアクションを撮った。 [oai_citation:6‡映画.com](https://eiga.com/movie/104538/?utm_source=chatgpt.com)

結果どうなるか。

暴力が派手になるのではなく、暴力が近くなる。画面の向こうの出来事が、こちらの皮膚のすぐ外で起きている感じ。殴られる音が痛い。走る息が苦しい。笑えるのに胃が重い。そんな矛盾が同居します。

それと、本作は彼の作品群の中では比較的アクセスしやすいと言われがちです。確かに入口は広い。ネコ、マフィア、勘違い、逃走。分かりやすい。だが途中から、いつものアロノフスキー節が忍び込む。油断すると持っていかれます。

主演オースティン・バトラーの勝ち顔ではなく負け顔が最高

主演はオースティン・バトラー。ハンク・トンプソンを演じます。 [oai_citation:7‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

この人、スターのオーラを出せるのに、今回は出さない。

出さないから刺さる。かっこいい主人公ではなく、運の悪い一般人の顔をしている時間が長い。目が泳ぐ。判断が遅れる。殴られて訳が分からない。観客が共犯みたいな気分になるんです。おいおい、そっち行くなよ、と言いたくなる。

そして面白いのが、元野球有望株という設定。

スポーツ選手としての反射神経や身体能力が、暴力の世界で別の形に転用される。盗塁の一歩目が、逃走の一歩目に変わる。タイトルの意味が、じわじわ効いてくる。

ゾーイ・クラヴィッツ、マット・スミス クセ者の配置がうまい

恋人イヴォンヌはゾーイ・クラヴィッツ。隣人ラスはマット・スミス。 [oai_citation:8‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

このキャスティング、分かっているなと思いました。

ゾーイは強さと脆さを同時に出せる。マット・スミスは、無害そうで危険そうを同時に出せる。ラスという人物が何を握っているのか。味方なのか敵なのか。そもそも本人も分かっていないのか。曖昧さが映画の推進力になります。

他にもレジーナ・キングなどの名前が並び、90年代NYの裏社会を彩る顔が揃っている。 [oai_citation:9‡Decider](https://decider.com/2025/08/28/watch-austin-butler-caught-stealing-movie-streaming-netflix-amazon-prime-video/?utm_source=chatgpt.com)

音楽がまた良い 静かなところで刺してくる

本作の音楽はロブ・シモンセンが担当。 [oai_citation:10‡Decider](https://decider.com/2025/08/28/watch-austin-butler-caught-stealing-movie-streaming-netflix-amazon-prime-video/?utm_source=chatgpt.com)

派手に煽るタイプではありません。

むしろ淡々としていて、そこが怖い。逃走の最中に鳴るメロディが、勝利のファンファーレにならない。負け戦のリズムが続く。だから現実味が増す。

そしてもう一つ、耳に残る話題がある。

ポストパンクバンドのIdlesがレコーディングに関わっているという情報。ノイジーで荒い熱量が、この映画の雑多なNYと相性が良い。 [oai_citation:11‡ウィキペディア](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0?utm_source=chatgpt.com)

音でテンションを上げるのではなく、音で神経を逆撫でする。

こういう映画、好き嫌いが分かれます。僕は好きだ。性格が悪いので。

90年代ニューヨークの湿度と色 画面がうるさいのに見やすい

1998年のニューヨークが舞台というのは伊達ではありません。 [oai_citation:12‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

路地の汚れ、ネオンの光、店の奥のタバコ臭さまで、画面から漂ってくる。スマホがない時代の不便さも効く。助けを呼ぶにもワンクッションある。逃げても地図アプリはない。人の顔色と足で生きるしかない。

そして裏社会が近い。

少し角を曲がるだけで、違うルールの世界に入ってしまう。観客も一緒に迷子になる。あれ、今どこにいるんだっけ。分からないのに走らされる。これが気持ちいい。いや気持ちよくはない。だが目が離れない。

この映画のキモは 理不尽を笑うしかない瞬間

本作の面白さは、理不尽の扱い方にあります。

ハンクは悪いことをしたわけじゃない。ネコを預かっただけ。親切をしただけ。なのに世界は容赦なく殴ってくる。 [oai_citation:13‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

ここで映画が説教を始めたら冷めます。

でも本作は説教しない。悲鳴と悪態と、時々の間抜けな笑いで乗り切る。観客もつられて笑う。笑った直後に罪悪感が来る。この波が上手い。

どんなに丁寧に生きても、運だけで崩れる日がある。

そんな現実を、ネコとマフィアで表現するセンス。悪趣味。最高。

質問していいですか もし自分がハンクならネコを引き受けますか

ここで一度、意地悪な質問。

もしあなたがハンクの立場なら、隣人の頼みを断れますか。断ったら断ったで気まずい。引き受けたら地獄。人生って、だいたいこういう二択を投げてきます。

だからこそハンクの行動がリアルに見える。賢くない選択。だが人間っぽい。そこが好きです。

裏側の話 原作と脚本の存在が映画の骨格を作っている

本作はチャーリー・ヒューストンの同名小説が原作で、脚本もヒューストンが担当したとされます。 [oai_citation:14‡ウィキペディア](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0?utm_source=chatgpt.com)

原作者が脚本に入ると何が起きるか。

世界の匂いが濃くなる。説明を減らしても筋が通る。キャラの台詞が妙に生々しい。裏社会の人間が、裏社会っぽい理屈で動く。観客が勝手に補完できる余白が増える。

もちろん映画は映画で、監督の癖が入る。アロノフスキーは脚本をそのまま撮るタイプではない。でも骨格が強いから、いくら暴れても折れない。だからこのカオスが成立している。

公開情報と位置づけ どんな気分で観るのが良いか

日本では2026年1月9日公開と案内されている情報が見つかります。 [oai_citation:15‡映画.com](https://eiga.com/movie/104538/special/?utm_source=chatgpt.com)

年明け早々、濃いものを食べたい人向け。

正月のふわふわ気分を一回殴って、現実に戻してくるタイプの映画です。胃薬は要らない。だが覚悟は要る。

血と暴力が苦手な人は注意。コメディだから平気という話でもない。笑っている間に痛いことが起きる。

アニメ好きに刺さるポイントもある 追い詰められた主人公の変身

映画好きはもちろんですが、アニメ好きにも刺さる要素があります。

追い詰められた主人公が、ある瞬間から人格のスイッチを入れる。これは少年漫画の定番。だが本作は、そのスイッチが美しくない。泥と汗と恐怖で汚れている。

そこが逆にリアル。

覚醒とは、光ることではない。腹を括ること。目が死ぬこと。声が低くなること。そういう変身です。

もう一つ質問 逃げるか戦うか どっちを選びますか

もう一つだけ聞きたい。

あなたなら逃げ続けますか。それとも、どこかで反転して戦いますか。正解はない。だが映画は、反転の瞬間を見せてくる。その見せ方がニヤつくほど上手い。

僕の偏見 この映画は まともに生きてる人ほど刺さる

偏見で言います。

真面目に働いて、ちゃんと暮らして、変なトラブルを避けている人ほど、この映画は刺さる。なぜならハンクがそうだから。普通の生活が突然壊れる恐怖。理由が分からないまま責められる理不尽。そこに、現代のストレスが重なる。

SNSで燃える。誤解が広がる。謝っても終わらない。

そういう空気を、90年代NYのマフィアで代替しているようにも見える。だから古い話なのに新しい。

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運の悪さが転がっていくクライム映画

  • アフター・アワーズ 夜の街が主人公を飲み込む感覚
  • スナッチ クセ者が集まるほど混沌が加速する快感
  • グッド・タイム 逃げても逃げても状況が悪化する地獄

90年代の湿度と裏社会の匂いが好きなら

  • レザボア・ドッグス 会話と暴力の距離が近い
  • ドニー・ブラスコ 信頼が崩れる音が聞こえる系
  • ヒート 都市の夜と犯罪の美学

アロノフスキー監督を遡るなら

  • ブラック・スワン 美しさが狂気に変わる瞬間
  • ザ・ホエール 逃げ場のない部屋で感情が炸裂する
  • レスラー 痛みを抱えた人間の尊厳

観る前に知っておくと楽になる小ネタ

タイトルのニュアンスを知ると、ハンクの行動が少し違って見えます。盗塁失敗。つまり、チャンスをつかみに行って転ぶ話。 [oai_citation:16‡Oyama cinema Harvest-小山シネマハーヴェスト](https://www.ginsee.jp/harvest/movie-guide/?b=0&c=1181&utm_source=chatgpt.com)

そしてネコ。

ネコはかわいい。だがこの映画では、かわいさが呪いの導火線になる。ここがブラックコメディの意地悪さです。笑っていいのか迷う。その迷いが楽しい。

締めの一言だけ このカオスを浴びると 2026年が少しだけ強くなる

きれいにまとまる話ではありません。

でも、まとまらないから現実っぽい。まともに生きるほど、運に殴られる日もある。なら、殴られた後どう動くか。ハンクの顔が教えてくれる。

僕はこういう映画に弱い。

だって、ズルいじゃないですか。ネコを預かっただけで人生が変わるなんて。 [oai_citation:17‡映画『コート・スティーリング』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ](https://caught-stealing.jp/?utm_source=chatgpt.com)

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