Disney+独占配信「親愛なるX」は、なぜこんなに中毒性が高いのか
Disney+スターで独占配信中の韓国ドラマ「親愛なるX(Dear X)」は、今年の韓ドラ界でもかなり“胃にくる”タイプのロマンススリラーです。
一言でまとめると、
- 地獄のような幼少期からのし上がったトップ女優ペク・アジン
- 彼女を守るために、自ら地獄に足を踏み入れた男ユン・ジュンソ
- そして、二人に踏みにじられた“X”たちの復讐と破滅
を描く、激烈なロマンススリラーです。
主演はキム・ユジョン、相手役にキム・ヨンデ。監督は「トッケビ」「太陽の末裔」「ミスター・サンシャイン」「Sweet Home」など、韓ドラ史に残る名作を生み出してきたイ・ウンボク。
ディズニープラス公式も「今年最も衝撃的な話題作」とプッシュしており、配信開始直後から海外メディアでも高く評価され、HBO Maxを含む複数地域でランキング上位を記録するなど、すでにグローバルヒットの様相です。
この記事では、世界一のライターかつ映画評論家として、
- 作品の魅力と見どころ
- キャラクターやテーマの解説
- 映画・アニメファン視点での楽しみ方
- 裏側エピソードや制作背景
- 「親愛なるX」が刺さった人におすすめの関連作品
まで、ネタバレはできるだけ抑えつつ、でもしっかり深掘りしていきます。
親愛なるXとは?
Disney+スターで独占配信のロマンススリラー
まずは基本情報から整理しておきましょう。
- タイトル:親愛なるX(Dear X)
- 配信:Disney+スターにて日本独占配信(TVINGオリジナル)
- 話数:全12話(初回4話一挙配信、以降毎週木曜2話ずつ)
- 原作:NAVERウェブトゥーン「親愛なるX」(作:Ban Ji-Woon=Vanziun)
- 監督:イ・ウンボク、パク・ソヒョン
- 脚本:チェ・ジャウォン(KBS脚本公募グランプリ受賞)、Vanziun
- 制作:Studio Dragon企画、Monster Union/Siwoo Company制作
キャストは超豪華。
- キム・ユジョン:ペク・アジン(トップ女優、表と裏の顔を持つ主人公)
- キム・ヨンデ:ユン・ジュンソ(アジンを守ろうとする幼なじみ)
- キム・ドフン:キム・ジェオ(アジンの影となる男)
- イ・ヨルウム:レナ(アイドル出身のライバル女優)
「雲が描いた月明かり」などで“国民の妹”と呼ばれていたキム・ユジョンが、今作では徹底的に「嫌な女」を演じ切る。そのギャップこそが、本作最大の売りのひとつです。
あらすじ
地獄からのし上がった女優ペク・アジン、その破滅までのカウントダウン
物語の中心にいるのは、トップ女優ペク・アジン。
- 美しく、人気者で、広告もドラマもひっぱりだこ
- しかしその内面は、過酷な幼少期が生み出した「モンスター」
彼女は相手の心を見抜くような鋭い洞察力を持ち、人の弱みを巧みに利用しながら、どん底から頂点まで這い上がっていきます。
その過程で、彼女は周囲の人間―友人、恋人、家族、事務所のスタッフなど―を、次々と「踏み台」として利用していきます。
彼女に踏みにじられた人々は、やがて“X”と呼ばれる存在に。
- ペク・アジンが人生で「利用し、捨ててきた」人たち
- 名前を呼ぶことすらしない、彼女にとってのX(変数)
この「X」たちが、彼女の栄光の裏側に折り重なるように存在しているのが本作の構造的な肝です。
一方、アジンを守ろうとするのが、幼なじみのユン・ジュンソ。
- 彼女の地獄のような家庭環境を目撃した少年時代
- 罪悪感と同情、そして歪んだ愛情が混ざり合い
- 「自分だけは彼女を理解し、守る」と決意してしまった男
ジュンソは、アジンのためなら人生を投げ出す覚悟で、彼女の罪をも背負おうとします。
タイトルにある「親愛なるX」の“送り主”が誰なのか、視聴を進めるほどに重さを増していく仕掛けも見事です。
タイトル「親愛なるX」に込められた残酷なラブレター
「親愛なるX」というタイトルは、まるで手紙の書き出しのようです。
- 親愛なる〇〇へ、という“ラブレター”の定型
- しかし宛名にあるのは、固有名詞ではなく「X」
ここに、本作の毒が凝縮されています。
Xには、いくつもの意味が重ねられています。
- ペク・アジンが踏みにじってきた「元・誰か」たち
- 彼女が意図的に名前を呼ばない存在
- 同時に、視聴者自身がいつでもなり得る「未知数」
原作ウェブトゥーンでも、この「X」というコンセプトが物語の根幹にあり、ドラマ版でも“彼女の足跡の上に積み重なるXたち”という構図が丁寧に描かれています。
ラブレターなのか、謝罪文なのか、それとも挑発状なのか。
タイトルの解釈が変化していくのも、「親愛なるX」を最後まで見た人だけが味わえる快感です。
キャラクター分析
愛せない主人公ペク・アジンと、「X」たちの悲鳴
ペク・アジン(キム・ユジョン)
- 地獄のような家庭で育ち、愛されることを知らずに大人になった女優
- 生き延びるために身につけたのは、嘘と演技、そして人心掌握術
- 美しい笑顔の裏に、徹底的な計算と冷酷さを隠し持つ
一部メディアは、彼女を「愛の欠如が生んだモンスター」と表現していますが、まさにその通り。
ドラマの面白い点は、「彼女は確かにひどいことをしているが、そうなるまでのプロセスを知ると、完全には切り捨てられない」というバランスにあります。
- 被害者であり、加害者でもある
- 見た目は主人公だが、道徳的には“反英雄”
こうしたアンビバレントな主人公像は、「ジョーカー」「パラサイト 半地下の家族」的な現代のヒーロー像とも通じます。
ユン・ジュンソ(キム・ヨンデ)
- 自分の母が幼いアジンに行った“ある行為”を目撃し、罪悪感を抱えたまま大人になった男
- 彼女のためなら、何でもする
- その「何でも」の中身が、物語が進むにつれてどんどん重く、危険になっていく
彼は「白馬の王子様」にはなりきれない、どこか壊れかけたナイトです。
愛情と執着、罪悪感と贖罪がごちゃ混ぜになった彼の行動は、見ていて決して気持ちのいいものではありませんが、その“気持ち悪さ”こそが本作のリアリティでもあります。
キム・ジェオ(キム・ドフン)
- アジンの影のように寄り添う男
- 彼女と共鳴し合うトラウマを持ち、危険な共依存関係に陥っていく
ジュンソが「光の方向からの愛」だとすれば、ジェオは「闇側からの愛」とも言えます。
どちらもアジンを愛しているが、その愛し方が決定的に違う。
この三角関係が、ただの恋愛ドラマではなく、サスペンスとしての緊張感を生み出しています。
レナ(イ・ヨルウム)ほか、Xとしてのキャラクターたち
- アイドルから女優になったライバル、レナ
- アジンをスターに育て上げる事務所社長
- 彼女を搾取する父親
- プロデューサー、記者、ファンたち
彼らはそれぞれ、アジンにとって利用価値のある駒であり、同時に「踏みにじられるX候補」でもあります。
一人一人のキャラクターがはっきり立っているので、
「この人もいずれXになるのでは」という予感が常につきまとう。
その予感が、全編にわたる不穏さを生み出しているのです。
演出と映像
イ・ウンボク監督が持つ“中毒性”がここでも炸裂
イ・ウンボク監督と言えば、
- 太陽の末裔
- トッケビ
- ミスター・サンシャイン
- Sweet Home
など、映像の美しさと中毒性の高い演出で知られるヒットメーカー。
「親愛なるX」でも、その強みは健在です。
- 暗いシーンでも情報量の多い画作り
- 女優という職業ならではの華やかな照明と、現実の暗さのコントラスト
- カメラワークによる“心理の揺れ”の可視化
特に印象的なのは、
- レッドカーペットを歩くアジンの姿
- スポットライトを浴びる瞬間の、あまりにも完璧な笑顔
- その直後、暗い控え室で見せる無表情、あるいは狂気を帯びた眼差し
といった、表と裏をワンカットで切り替えて見せるシーンです。
映画やアニメで言えば、「パプリカ」や「Perfect Blue」のような、
“ステージ上の顔”と“裏の顔”のギャップを視覚的に見せる系統に近い快感があります。
原作ウェブトゥーンとの関係
ドラマ版が強化した「リアルな業界感」
原作はNAVERウェブトゥーンで人気を博した同名作品で、作者Vanziun自身がドラマの脚本にも参加しています。
そのため、
- 原作の持つ毒や皮肉
- アジンの内面独白
といったコアな部分はしっかり維持しつつ、ドラマならではの“現場感”“業界感”が強化されています。
具体的には、
- 撮影現場や記者会見、SNS炎上の描写がよりディティール豊かに
- 俳優同士の力関係や、事務所とメディアの駆け引き
- スポンサー、広告案件、海外展開といったリアルなトピック
など、現代の韓国エンタメ業界を意識した要素が随所に盛り込まれています。
「芸能界もの」「業界裏側もの」が好きな人には、このあたりがたまらないはずです。
テーマ解説
愛の欠如が生むモンスターと、「X」たちの叫び
「親愛なるX」の根底にあるテーマは、とてもシンプルです。
- 愛されなかった子どもは、何になるのか
- モンスターを作ったのは誰なのか
- そして、そのモンスターに踏みにじられた人たちは、どう生きればいいのか
韓国メディアのインタビューでも、本作は
- 愛の不在が生んだ怪物の物語
- 被害者性と加害者性が同居するキャラクター像
として分析されています。
アジンは確かにひどいことをします。
しかし彼女の父親、彼女を搾取する大人たちも、十分すぎるほど加害者です。
その中で、“X”たちはどこに位置付けられるのか。
- アジンの被害者であり
- 同時に、彼女の成功に依存している共犯者でもある
という、この曖昧さが、本作を単なる勧善懲悪ドラマから一段階引き上げています。
映画・アニメ好きに刺さるポイント
映画好き、エンタメ好き、アニメ好きという視点で見ると、「親愛なるX」はかなり“おいしい”作品です。
- 主人公がほぼ完全にアンチヒーロー
- 好きになれるかと言われると、かなり微妙
- でも、目が離せない
- 「この先どうなるのか」は気になって仕方がない
これはまさに、現代のダークヒーローものが持つ吸引力です。
- 映像と音楽の“中毒性”
イ・ウンボク監督らしい、音楽の使い方とテンポ感。
静かなシーンから一気に張り詰めた緊張へ、あるいは派手な演出から冷たい現実へ、という落差が中毒になります。
- アニメ文脈での比較が楽しい
- ステージと裏側の二重構造という点では「Perfect Blue」「推しの子」
- 貧困やトラウマが生んだ歪んだ愛という点では「鬼滅の刃」の鬼側の物語
- 復讐や階級の問題という点では「進撃の巨人」「地獄楽」
など、いろいろな作品と比較しながら楽しめます。
もちろん、直接の関係はありませんが、
「親愛なるX」をきっかけに、こうした作品たちを見直してみるのも面白いはずです。
視聴する前に知っておきたいこと
メンタルへの負荷と、視聴ペースのおすすめ
まず正直に言うと、「親愛なるX」はかなりヘビーな作品です。
- 虐待、DV、精神的な暴力
- 自己肯定感の低さ、依存、共依存
- SNS炎上やメディアによるリンチ
こういった要素が物語の随所に出てきます。
なので、
- 体調が悪いときに一気見する
- 気持ちを落ち着かせる暇もなく連続視聴する
というのは、あまりおすすめしません。
個人的なおすすめ視聴ペースは、
- 初回4話を2回に分けて(2話+2話)
- その後は週末などに2話ずつじっくり見る
くらいのテンポです。
特に、アジンの過去が明かされるエピソードは、精神的なダメージも大きいので、視聴後に軽めの作品でクールダウンするのもありです。
制作の裏側とビジネス的な意味
なぜDisney+で「親愛なるX」なのか
「親愛なるX」は、単なる一作品にとどまらず、ビジネス的にも象徴的な意味を持っています。
- 韓国のTVINGオリジナル作品
- 制作はStudio Dragon系の制作陣
- それをDisney+とHBO Maxがグローバル配信
という形で展開されており、
CJ ENMとディズニーのパートナーシップの一環として位置づけられています。
ディズニー日本法人のリリースでは、「親愛なるX」は
- NAVERウェブトゥーン原作
- イ・ウンボク監督によるTVINGオリジナル
- 日本ではDisney+スターで“見放題独占配信”
と明記されており、今後も同様の韓国作品が続々と投入されることが示唆されています。
つまり「親愛なるX」は、
- Netflix中心だった韓ドラ配信勢力図に対し
- Disney+が本気で一石を投じにきた象徴的タイトル
でもあるわけです。
作品の中身だけでなく、「なぜ今このタイトルがDisney+なのか」という視点で見ると、また違った面白さがあります。
親愛なるXが好きならおすすめしたい作品
最後に、「親愛なるX」が刺さった人におすすめしたい作品をジャンル別に挙げておきます。
韓国ドラマ
- トッケビ~君がくれた愛しい日々~ イ・ウンボク監督の代表作。ファンタジー色は強いですが、キャラクターの描き方や余韻の残し方は共通点多めです。
- Sweet Home -俺と世界の絶望- 同じくイ・ウンボク演出。モンスター化というホラーの皮をかぶった、トラウマと孤独の物語。
- ザ・グローリー ~輝かしき復讐~ いじめと復讐を扱った重厚な復讐劇。トラウマが人をどう歪めるか、という点で通じるものがあります。
- マイ・デーモン キム・ユジョンの直近主演作。こちらはラブコメ×ファンタジー寄りですが、「親愛なるX」で興味を持った人はぜひ。
映画
- パラサイト 半地下の家族
- ジョーカー
- ブラック・スワン
いずれも、「被害者であり加害者でもある人物」を描いた作品として、見比べると面白いです。
アニメ
- Perfect Blue アイドルと女優をめぐる心理スリラー。芸能界ものの金字塔的作品。
- 推しの子 アイドル業界の光と闇、ネット炎上、ファン心理など、「親愛なるX」と共通するテーマが多数。
まとめ
「モンスター」は、誰が、どうやって生み出したのか
「親愛なるX」は、
- 人生の底辺から頂点まで登り詰めた女優ペク・アジンの破滅
- 彼女を守るために地獄を選んだユン・ジュンソの愛
- そしてその二人に踏みにじられた“X”たちの物語
を描いた、非常に苦くて、しかし目が離せないロマンススリラーです。
美しく、残酷で、中毒性が高い。
まさに“今年最も衝撃的な話題作”という宣伝文句に偽りなしの一本と言えるでしょう。
- 愛がなかったら、人はどこまで壊れてしまうのか
- その壊れた人間に、どこまで同情できるのか
- そして、自分はどこまで「X」側に立ち得るのか
視聴後には、そんな問いがじわじわと残ります。
映画好き、エンタメ好き、アニメ好き。
どんな入り口からでもいいので、Disney+を開いて、まずは第1話の再生ボタンを押してみてください。
あなたにとっての「親愛なるX」が、
誰になるのか。
その答えは、全12話を見終えたとき、きっと少しだけ見えてくるはずです。