はじめに:評価が割れた続編、しかし今こそ語りたい一本
『プレデター2』(Predator 2/1990年)は、1987年の傑作『プレデター』の正式な続編でありながら、長らく“賛否両論”のポジションに置かれてきた作品です。
- 舞台はジャングルではなく近未来ロサンゼルス
- 主演はアーノルドではなくダニー・グローヴァー
- ギラついた犯罪都市、暴力描写、過剰な熱気
- プレデターは「シティ・ハンター」として進化
当時、多くの観客が期待していたのは「シュワルツェネッガー続投のジャングル無双」でした。そこへ飛び込んできたのが、汗と銃声とギャングとヘリが乱れ飛ぶカオス都市映画。そりゃ評価も揺れます。
しかし、今あらためて見直すと、
「SFアクションとしても、フランチャイズの世界観拡張としても、想像以上に攻めている一本」
であることが分かります。
この記事では、映画好き・エンタメ好き・アニメ好きの読者に向けて、
- 『プレデター2』の魅力を“誤解されがちな続編”から“実は重要な分岐点”へアップデート
- 裏側の制作秘話
- プレデター像の進化と世界観の拡張
- 現代目線での見どころ
- 関連作品・おすすめ作品への導線
まで、WPにそのままコピペできる形で丁寧に解説していきます。
作品概要:舞台は近未来ロサンゼルス、灼熱と暴力の狩場
まずは基本情報から押さえましょう。
- 公開年:1990年
- 監督:スティーブン・ホプキンス
- 脚本:ジム&ジョン・トーマス(前作と同じ兄弟コンビ)
- 製作:ジョエル・シルバーほか
- 主演:ダニー・グローヴァー(ロサンゼルス市警ハリガン刑事)
- 共演:ゲイリー・ビジー、ビル・パクストン、マリア・コンチータ・アロンソ、ルーベン・ブラデス ほか
- 音楽:アラン・シルベストリ(前作に続投)
- 舞台設定:灼熱の「1997年」ロサンゼルス、ギャング抗争と犯罪が爆発した近未来
警察 vs ギャングの抗争が激化する中、
得体の知れない「第三の存在」が、武装集団や警官たちを“見えない方法”で次々に殺していく。
その正体は――前作でダッチたちを襲った、あの狩猟民族・プレデター。
ただし今回はジャングルではなく、
コンクリートジャングルそのものが狩場
というコンセプトが貫かれています。
『プレデター2』の魅力1:都市に降臨したシティ・ハンターという発想
前作は「特殊部隊 vs 宇宙ハンター」という直球サバイバルでしたが、『プレデター2』は角度を変えてきます。
コンクリートジャングルの“獲物”
舞台は猛暑と犯罪で荒廃したロサンゼルス。
- ギャング同士の抗争
- 麻薬組織の抗争現場
- 屋上で銃撃戦を繰り広げる武装集団
- パニック寸前の市民、追いつかない警察
ここに「強者を好む宇宙の狩人」を放り込んだらどうなるか――という発想が、そのまま映画になっています。
東宝怪獣映画的に言えば、
「怪物だけでなく、都市そのものが騒音と熱気でモンスター」
という状態で、その喧騒の中をプレデターが縦横無尽に移動する構図が面白い。
プレデターがビルからビルへ飛び移り、電車に乗り込み、射撃音に反応して“武器を持つ者”だけを狩りの対象として選別していく姿は、前作以上に「掟あるハンター」としてのキャラクター性が強調されています。
魅力2:ダニー・グローヴァー演じる“凡人寄りの主人公”の味
アーノルドのダッチは「ザ・最強兵士」でしたが、本作の主人公マイク・ハリガンは少し違います。
- 年齢的にも渋め
- 身体能力もダッチほど超人ではない
- だが一歩も引かない現場叩き上げ刑事
彼は「スーパーヒーロー」ではなく、
「限界ギリギリまで粘る人間代表」
としてプレデターに挑みます。
だからこそ、終盤の対決に漂うのは「筋肉無双」ではなく「執念」「意地」。
この温度感が、前作とは違うタイプのカタルシスを生み出しています。
銃も仲間も奪われ、それでも食らいつき、最後はプレデターの船に乗り込んで一対一(+α)で渡り合う展開は、地味に熱く、見返すほどクセになるポイントです。
魅力3:プレデター神話の“世界観”を一気に広げた功績
『プレデター2』がフランチャイズ的に最重要視されるのは、この一点と言ってもいいです。
多数のプレデター、氏族、儀式の存在
終盤、ハリガンがプレデターの宇宙船内部に侵入すると、
- 何体ものプレデター(ハンター仲間)が現れ
- 倒されたシティ・ハンターを見下ろし
- ハリガンに対して「戦士としての敬意」を示す
というシーンがあります。
ここで提示されるのは、
- プレデターは単独行動の怪物ではなく「クラン(氏族)」として行動する文化的存在
- 強き敵には敬意を払い、トロフィーを贈る“武人の倫理”を持つ種族
という設定です。
有名すぎる「エイリアンの頭蓋骨」カメオ
宇宙船のトロフィールームには、様々な生物の頭蓋骨に混ざって「エイリアン(ゼノモーフ)」の頭蓋骨が飾られています。
この一瞬のカットが、
「プレデターとエイリアンは同じ宇宙に存在しているのでは?」
というファンの妄想を一気に現実化させ、のちの『AVP』シリーズへと繋がっていきます。
世界観の連結とスケールアップ。
それをさりげない美術一発でやってのけたという意味で、『プレデター2』はフランチャイズ史上きわめて重要なターニングポイントです。
魅力4:暴力と混沌、その“攻めたトーン”
『プレデター2』は、とにかく全編がうるさい、暑い、荒れている。
- 冒頭から銃撃、爆発、ヘリ、ニュース映像
- ギャングの過剰演出、ドラッグ、派手な撃ち合い
- スラッシャー映画寄りの直接的なバイオレンス
この過剰さが苦手な人も多く、公開当時の評価が割れた一因にもなりました。
しかし今の目で見ると、この
「90年代初頭アメリカ社会不安+メディア過剰報道のカリカチュア」
のような描写は、むしろ作品の個性になっています。
プレデターは「暴力に満ちた社会」に対してさらに外側からやってくる“超越的暴力”であり、その図式は現代のダークヒーロー/アンチヒーロー物にも通じるテーマ性を持っています。
魅力5:アラン・シルベストリのスコアとビジュアルのキレ
音楽は前作に続きアラン・シルベストリ。
おなじみのプレデターテーマをベースにしつつ、よりスリラー寄り・都市犯罪映画寄りのアレンジがなされています。
映像面では、
- スモーク、多色照明、ネオン、蒸気
- プレデターのサーモグラフィ視点
- 高所アクションや列車内シーンのスリル
など、ホプキンス監督らしい“ビジュアルの押し出し”が全開。
ジャングルの自然光から一転、人工光源とスモークにまみれた世界で暴れるプレデターは、それだけで「神話の都市侵攻編」としての説得力を持っています。
制作裏話:あのシーン、その決断の背景
シュワルツェネッガー不在の理由
多くのファンが気になった「なぜダッチが出ないのか?」問題。
報じられているところでは、
- ギャラ条件やスケジュールの折り合い
- 物語の方向性の違い
などが重なり、結果として続投は実現しなかったとされています。
しかしこの“不在”が逆に、
「別の土地、別の人間が、同じ種族に挑む物語」
というシリーズ的な広がりを生んだ側面もあります。
プレデター・スーツとアクション
プレデター役は前作に続きケヴィン・ピーター・ホール。
高温の撮影環境、重いスーツ、高所スタントという過酷な条件下で、
シティ・ハンターの俊敏さと威圧感を体現しました。
前作より装備が増え、
- スマートディスク
- ネットガン
- 伸縮スピア
など、多彩な武器を使うことで「熟練ハンター」「テクノロジーの格差」を視覚的に見せています。
舞台「1997年」という近未来感
製作時点(1990年)から見た数年後の“未来LA”という設定は、
- 犯罪増加
- 暑さの異常
- 社会不安
- メディアの煽動
といった社会問題を誇張しつつ、そこに宇宙ハンターを放り込むことで、
「時代そのものが獲物に見える」
独特の空気感を作り出しています。
現代の目で『プレデター2』を楽しむポイント
1. 「異端の続編」としてではなく「スピンオフ的視点」で観る
もしあなたが『プレデター』第一作を神格化しているなら、『プレデター2』は
- 正統派続編
- ではなく「別の戦場のケーススタディ」
として観ると一気に評価が変わります。
「プレデターは世界中・あらゆる時代で狩りをしている。その一例がLAだった」
と捉えると、本作の構図やラストの“プレデター集会”も非常にしっくりきます。
2. プレデターの「掟」と“選別の倫理”を見る
本作でも、
- 非武装の民間人はスルーする
- 武器を持つ、あるいは闘志ある者を優先して狩る
というプレデターの行動原則が描かれます。
これによりプレデターは、無差別殺戮者ではなく、「自分なりのルールを持つ戦士」としての立ち位置を強めています。このニュアンスは、近年の『Prey』や今後の新作群にも引き継がれる重要な要素です。
3. アニメ・ゲーム好きにも刺さる“世界観拡張回”として
『プレデター2』は、シリーズで言えば「世界設定が一気に広がる回」に相当します。
- 種族全体の存在
- 他作品との接続を匂わせるトロフィー
- 都市型ハントの実例
こうした要素は、アニメやゲームでいう「外伝」「設定資料集的エピソード」が好きな層にドンピシャです。
この作品が好きならおすすめしたい関連作品
最後に、『プレデター2』に刺さった人向けに、チェックしてほしい作品を紹介します。
1. 『プレデター』(1987)
言わずもがな原点。
ジャングルでの「最強 vs 最強」を押さえた上で『2』を観ると、
都市型ハントの違いと共通点がより鮮明になります。
2. 『プレデターズ』
孤島ならぬ“異星の狩場”を舞台にしたサバイバル。
複数のプレデターや異なる氏族の存在がより具体的に描かれ、『プレデター2』で提示された世界観をさらに推し進めた一本。
3. 『Prey』
18世紀北米を舞台に、若き女性ハンターとプレデターの対決を描く傑作。
「プレデターはどの時代にも現れ得る」というコンセプトを最高の形で可視化しており、『プレデター2』の“時代と場所を変えても成立する”強さを再確認できます。
4. 『エイリアン2』『AVP』シリーズ
『プレデター2』のエイリアン頭蓋骨カメオにニヤリとした人は、この系譜もマスト。
- 『エイリアン2』:武装部隊 vs 怪物軍勢という構図の最高峰
- 『AVP』:実際にクロスオーバーが実現したお祭り作(世界観的整合性はさておき“こういうのが見たいんだろ?”を形にした一本)
5. 近年のプレデター新展開
2020年代以降、フランチャイズは
- 『Prey』での原点回帰&再評価
- アニメーション作品や新作映画企画
- そして2025年公開『Predator: Badlands』など、新たな方向性
と、再び活発に動いています。
『プレデター2』で蒔かれた「多様な時代と場所でプレデターを描ける」という種は、今まさに大きく花を咲かせつつある段階と言えます。
まとめ:『プレデター2』は“外せない分岐点”として再評価すべき
『プレデター2』は、
- 舞台をジャングルから大都市へ移した挑戦的続編
- プレデター種族の文化と掟を初めて深掘りした作品
- エイリアンとのクロスオーバーの種を仕込んだ世界観ハブ
- 90年代的な暴力・熱気・混沌をパッケージングしたカルト的人気作
として、フランチャイズ史の中で確かな役割を担っています。
初見時に違和感があった人も、今の視点で見直すと、
「これはこれで、めちゃくちゃ攻めたコンセプトのSFアクションだな」
と感じられるはずです。
まだ見ていない人は、ぜひ『プレデター』(1987)とセットで。
一度観た人も、「世界観拡張回」としてもう一度味わってみてください。